ステンレスとは?特徴・種類・錆びにくい理由を詳しく解説

  • 材料関連

ステンレスには多彩な用途があり、台所のシンク・洋食器・刃物など身近なものから、建物の外装・パソコン・半導体製造装置・自動車部品・航空機の構造材まで、様々な製品が作られています。

錆びにくいことが最大の特徴のステンレスですが、その種類は非常に多く、JISで規定されているだけでも200以上あります。その化学的性質・機械的性質・価格は幅広く、用途に対して過不足のない適切なものを選ぶことが重要です。

この記事では、ステンレスの特徴と種類について述べた後、錆びにくさのメカニズム、最後にそんなステンレスでも錆びる場合について、丁寧に解説いたします。

ステンレスとは?

ステンレスとは?

ステンレスを一言でいうと、鋼(鉄に数%の炭素を加えた合金)にクロムを12%程度以上混ぜたものです。錆びにくいことが最大の特徴であるため、錆びないという意味の英単語stainlessが名前となっています。正確にはステンレス鋼ですが、一般的にステンレスと呼ばれます。

主成分が鉄とクロムだけのものをクロム系ステンレス、ニッケルを加えたものを、クロム・ニッケル系ステンレスといいます。

ステンレスの性質をよくするために他の元素も数%加えられますが、主元素としては、鉄とクロム、ニッケルは含む場合と含まない場合があると覚えてください。

ステンレスの特徴

ステンレスの特徴

ステンレスにも様々な種類がありますが、多くのステンレスに共通する特徴をご紹介します。

  1. 錆びにくい
  2. 熱伝導性が低い
  3. 削りにくい

錆びにくい

錆びにくさは、ステンレス最大の特徴です。
そもそも錆びとは何かですが、鉄クギを野外に放置すると、はじめは光沢のある銀色だったのに、ザラザラで赤茶けた表面に変わります。これを錆びといい、鉄の場合は赤いので赤錆と呼ばれます。

つまり錆びとは、金属表面が酸素や水分と反応して、酸化物に覆われることです。金属元素の大部分は、金属の状態でいるよりも、酸化物などのイオン化した方が安定に存在できます。言うならば、鉄は赤錆で覆われているのが通常の状態なのです。

金属が腐食された状態ですので、錆びのことを”腐食物”、錆びにくさのことを”耐食性”とも表現します。

しかし、錆びた状態では人間が利用しにくいため、錆びにくくした鉄が発明されました。これがステンレスです。錆びにくい理由は、「ステンレスが錆びにくい理由」にて解説します。

熱伝導性が低い

ステンレスは熱伝導率が低く、鉄と比べると2分の1から3分の1程度、アルミニウムと比べると8分の1から13分の1程度となります。

したがってステンレスの鍋は、熱が伝わりにくく、局所的に加熱されて焦げ付きやすいというデメリットがあります。しかしながら見た目の良さや錆びにくいメリットがあるため、使用されています。

熱伝導率の低さをメリットとして活かす用途としては、水筒やポットの内壁です。熱を伝えにくいことから、保温性能が得られます。

削りにくい

ステンレスは削りにくい(被削性が劣る)という特徴があります。その要因は二つあり、一つは加工硬化の度合いが大きいことです。ステンレスではない普通の鋼(炭素鋼)でも加工硬化は起こりますが、ステンレスでは加工硬化の度合いが炭素鋼の2倍といわれています。

もう一つの要因は、熱伝導性が低いことです。熱伝導性の低さは、保温性ではメリットとなりますが、切削加工においては、加工中に発生した熱が蓄積し、工具が破損しやすくなるというデメリットとなります。

ステンレスの5つの種類

ステンレスの5つの種類

「ステンレスとは?」にて、ステンレスにはクロム系と、クロム・ニッケル系があると説明しました。
さらに金属組織の種類によって分けることで、クロム系は2種類に、クロム・ニッケル系は3種類に分けられます。

この後の説明で出てくる、マルテンサイト、フェライト、オーステナイトとは、鉄の金属組織の名前であり、それぞれ異なる結晶構造をしています。

  1. マルテンサイト系ステンレス
  2. フェライト系ステンレス
  3. オーステナイト系ステンレス
  4. 二相系ステンレス
  5. 析出硬化系ステンレス

1. マルテンサイト系ステンレス

クロム系ステンレスの一種であり、比較的安価であるため、汎用ステンレスとして広く使用されます。
代表的な材料としては、13%程度のクロムが含まれたSUS403やSUS410などです。

硬さが特徴のステンレスであり、これは結晶内にたくさんひずみが残ることに由来します(ひずみ硬化といいます)。

しかしながら、ステンレスの中では最も耐食性が低く、厳しい環境では錆びてしまいます。
用途は構造部材やOA機器のシャフト、包丁などがあげられます。

2. フェライト系ステンレス

こちらもクロム系ステンレスであり、高価なニッケルを含まない比較的安価な材料です。
代表的な材料としては、18%程度のクロムが含まれたSUS430などです。

ステンレスの中でも耐食性が優れています。しかしながら、フェライトという結晶構造は脆くて割れやすい性質があるため、衝撃的な荷重が加わるような場所には使用できません。

用途は厨房用品、自動車部品(高温環境で使用されるものを除く)などがあげられます。

3. オーステナイト系ステンレス

クロム・ニッケル系ステンレスの一種であり、その優れた特徴から大量に生産されています。
代表的な材料としては、18%のクロムと8%のニッケルを含む18-8ステンレスがあります。18-8ステンレスの中でも、炭素の含有量を低く抑えたSUS304という材料が有名です。

オーステナイトという結晶構造に由来して、加工性がよく耐食性に優れるという特徴があります。

用途は広く、厨房用品、食品・化学工業、自動車部品、理化学装置などがあげられます。

4. 二相系ステンレス

クロム・ニッケル系ステンレスの一種であり、高価なステンレスの一つです。フェライト相とオーステナイト相の二つの金属組織が併存するため、物理的性質は両者のほぼ中間となります。

代表的な材料は25%のクロムと5%のニッケルと2%のモリブデンを含むSUS329J1などです。
応力腐食割れに強く、耐海水性に優れるという特徴があります。

用途は海水用復水器、海水淡水化装置、製塩プラントなどがあげられます。

5. 析出硬化系ステンレス

クロム・ニッケル系ステンレスの一種であり、こちらも高価なステンレスです。ステンレスの主元素である鉄・クロム・ニッケルに、銅・アルミニウム・チタンなどを加えて、高温で析出硬化したステンレスとなります。

代表的な材料は17%のクロムと4%のニッケルと4%の銅などを含むSUS630などです。
高強度と耐食性がいずれも良好であることが特徴です。前述のマルテンサイト系も高強度ですが、耐食性が劣ります。

用途は、シャフト類、エンジン部品、航空機・ロケットなどの構造材などがあげられます。

ステンレスが錆びにくい理由

ステンレスが錆びにくい理由

ここでは、ステンレスが錆びにくい理由、さらにそんなステンレスでさえも錆びてしまう環境について解説します。

  1. 錆びにくさのメカニズム
  2. 本当にステンレスが錆びた?もらい錆びの可能性
  3. ステンレスが錆びやすくなる環境

錆びにくさのメカニズム

ステンレスとは?で述べた通り、ステンレスは鉄に12%程度のクロムが入った金属合金です。このクロムがステンレスの表面に水酸化物の膜を作り、周辺からの酸素や水分を遮断するため、鉄の酸化物ができにくい(錆びにくい)のです。

このように金属の表面を覆って腐食(錆び)を防ぐ膜のことを、”不動態皮膜”といいます。わずか100万分の1mm程度(数ナノメートル)の非常に薄い膜ですから、人の目で見ることはできません。

つまり、鉄が酸素や空気と反応して酸化物(錆び)になる前に、クロムが膜を作って表面を覆うため、ステンレスは錆びにくいのです。

本当にステンレスが錆びた?もらい錆びの可能性

錆びにくさが特徴のステンレスも、錆びたとクレームがつくことがあります。しかし実際は、別の鉄でできた部品が錆びて、その錆がステンレス上に付着しただけということが少なくありません。この現象を”もらい錆び”といいます。

“もらい錆び”は、このように錆びが付着するケースの他に、鉄粉が飛んできてステンレス上に付着してから錆びて発見されるケースもあります。現場の環境によっては鉄粉が舞っていることもありますから、周辺環境の確認が必要です。

ステンレスが錆びたのか、もらい錆びなのかは、元素分析をすると判別できます。ステンレスなら12%程度クロムが入っているはずですから、錆びからクロムが検出されなければ、もらい錆びと考えられます。

ステンレスが錆びやすくなる環境

ステンレスは錆びにくいとはいえ、万能ではありません。錆びてしまうケースを2つ紹介します。

一つは、塩素イオンのようなハロゲンイオンを含む環境です。塩素イオンによりクロムの膜が局部的に破壊され、穴が開くことがあります。海水には塩分、つまり塩素イオンが含まれますから、海水中や海の近くはステンレスにとって過酷な環境となります。

もう一つは塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などの環境下です。この場合はクロムの不動態被膜が作られず、表面が一様に錆びることになります。

ステンレスのまとめ

ステンレスのまとめ

この記事では、ステンレスの特徴と種類、錆びにくさのメカニズムについて詳しく解説しました。性能も見た目もよいステンレスは身近なものから工業製品まで幅広く使用され、性能を改善するべく新しい種類が開発され続けてきたため、さらにその用途を広げています。

三和ニードルベアリングは、研削加工を中核とした超精密加工に強みを持つ企業です。サブミクロン(10000分の1mm)単位の高精度な加工を実現するため、用途や目的に応じて最適な熱処理を選定し、安定した品質を提供しています。

「ステンレスの加工は難しい」と言われる中でも、当社では長年の技術とノウハウにより、安定した加工対応が可能です。ステンレスを中心に、軸受鋼やチタン・セラミックといった難削加工材など幅広い材料に対応しており、多様な業界・用途でご活用いただいております。

材料や用途を問わず柔軟に対応しておりますので、金属加工にお困りの際はぜひ三和ニードル・ベアリングへご相談ください。

メディア一覧へ

CONTACT

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ

029-866-0811受付時間 / 平日 9:00 〜 17:00

会社案内・製品情報がわかる

試作のご相談やお問合わせ