「できない」を「やってみよう」に。前例なき難削材『生体吸収性マグネシウム合金』製品の開発秘話
- 製作事例
企業紹介 | 「体に残らない医療機器」を実現
メルフロンティア株式会社は、マグネシウム合金を用いた医療機器の開発に取り組むベンチャー企業です。現在は、骨折治療などで使用される体内埋込型のスクリュー製品を中心に開発を進めています。従来のステンレスやチタン合金製のスクリューは、生涯体内に残すことを前提とした材料で、不具合が生じた場合には摘出手術が必要となるケースがありました。
一方、メルフロンティアが採用するマグネシウム合金は、生体内で自然に分解・吸収されるという特性を持ち、取り出さなくてよい医療機器という新たな価値を生み出します。
こうした特性から、患者の身体的・経済的負担を軽減できる可能性があり、医療分野で大きな注目を集めています。
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開発製品の紹介|体内で吸収される“次世代スクリュー”とは?
今回、開発した製品はまさに主力製品の1つである、手指などの骨折治療に使用する極小のスクリューです。最大の特徴は、生体吸収性のマグネシウム合金製であること。
従来のステンレスやチタン合金製のスクリューは、問題が生じない限り、体内に埋植したままにするのが一般的ですが、ネジの弛み、炎症や合併症などのトラブルが発生した場合には、抜去手術が必要になるという課題がありました。
一方で、同社が注目するマグネシウム合金は、一定期間を経ると体内に吸収される特性があり、術後の再手術が不要になります。さらに、生分解性樹脂(PLLA)に比べて強度も高く、医療現場からの期待も大きく、新しい機能を持った医療機器として世界中で注目を集めています。
しかしながら、マグネシウムは可燃性が高く、非常に加工が難しい材料でもあり、金属加工業界でも扱いを敬遠されがちで、特に医療機器として使用する製品の加工に対応して頂ける加工業者はほとんど無い、という状況でした。
そのため「マグネシウムスクリューの製品化」は、素材技術・加工技術ともに高いハードルがある挑戦的な開発でした。
三和ニードル・ベアリングへの依頼理由|挑戦を受け入れてくれる会社
マグネシウム合金を用いた医療機器の開発に興味を持って頂ける企業を探す中で、多くの企業には「開発が難しい」「危険」「加工が難しい」と難色を示されてきました。そんな中、相談に乗って頂けたのが三和ニードル・ベアリングでした。
転機となったのは、静岡とつくばをつなぐ技術交流イベント。
代表の北川がウェビナーに登壇したことがきっかけで、三和ニードル・ベアリングからお声かけいただき交流が始まりました。
資金面を含め、難加工材であるマグネシウム合金の製造を受けて頂けないか、と率直にお願いしたところ、三和ニードル・ベアリングは当社の難題に真正面から向き合ってくださり、全面的なバックアップを申し出てくださいました。
その時、日本にもまだモノづくりに対して熱意を持って話を聞いて頂ける会社があったのか、とこれまでの苦労が報われた気持ちになり、その時の感動は今でも忘れることができません。
その後、製品構想を相談した際には、「(当時)うちはやったことがないけど、やってみよう」と開発リスクを承知で受け入れてくださいました。
実際に開発段階に進むと、担当者の対応も非常に丁寧で、私たちが金属加工に関する知識を持っていないことを汲み取った上で、進め方や検討ポイントを一つひとつリードしてくださいました。
資料の準備や要点の整理も含めて、常に伴走してくれるスタンスが「もう一度がんばってみよう」と思わせてくれる原動力になりました。
三和ニードル・ベアリングに合う企業像|「やったことがない」から始まるものづくり
三和ニードル・ベアリングとご一緒して強く感じたのは「やったことがない」に向き合う姿勢です。
私たちが相談した当初、マグネシウム合金の加工は、三和ニードル・ベアリングにとっても未経験の領域でした。ですが、「やったことがないけど、やってみよう」と真っ先に言ってくれたんです。
普通なら断られるか、慎重な姿勢を取られる場面だと思います。実際、他の企業では「経験が無いから」「難加工品なのでうちでは難しい」と話が途絶えるケースが多かったので、三和ニードル・ベアリングさんのチャレンジ精神には勇気づけられました。
もちろん、リスクがないわけではありません。
新しい素材・未知の加工方法に挑むには、技術的な壁も多いです。
ですが、未知の領域に対しても一緒に挑戦してくれるアントレプレナーシップが三和ニードル・ベアリングと一致したのだと思います。
だからこそ、まだ図面になっていないアイデアをカタチにしたい、試作段階から並走してくれるパートナーを求めている企業にとって、三和ニードル・ベアリングは最適な存在だと思います。
今後の展望|“世界初”を社会実装するスタート地点に。
今後はスクリューのバリエーションも増やしていきたいと考えており、その際には、三和ニードル・ベアリングと一緒に図面の段階から一緒に進行して頂けるものと期待しています。三和ニードル・ベアリングは単に形を変えるだけでなく、量産化を見据えて加工のしやすさなども考慮した製造工程を組み上げてくれそうな予感がしており、大いに期待しています。
また、マグネシウムにはまだまだ活かしきれていない特性があると感じており、それらを引き出した新たな製品開発にも挑戦していきたいと考えています。
三和ニードル・ベアリングと共に、より高精度で、より価値ある製品を形にしていけるよう、これからもパートナーとして取り組んでいきたいと思っています。