世界初の『体に残らない医療機器』を実現へ「生体吸収性マグネシウム合金」の製品開発に挑む協業事例

  • 製作事例

難削材であるマグネシウム合金を使用した製品の開発に挑むメルフロンティア株式会社。
その開発過程で直面した“加工の壁”を乗り越えるために、精密加工技術に強みを持つ三和ニードル・ベアリングと協業が実現しました。

本記事では、「できない」を「やってみよう」に変えた両社のものづくりへの挑戦と、前例のない医療機器開発の裏側を紹介します。

会社名 メルフロンティア株式会社
業界 医療機器業界
取組内容 難削材である「生体吸収性マグネシウム合金」の加工
会社HP https://mel-frontier.jp/

メルフロンティア株式会社について
メルフロンティア株式会社(以下メルフロンティア)は、2017年に産業技術総合研究所の技術移転ベンチャーとして設立された、医療機器開発のスタートアップです。「治療して終わり」ではなく、「治療の先を見据えた医療機器」を目指し、体内で分解・吸収されるマグネシウム合金製の生体吸収性治療機器の研究・開発に取り組まれている企業です。

メルフロンティア様の取り組みとは?|マグネシウム合金で「体に残らない医療機器」を実現

メルフロンティア様の取り組みとは?|マグネシウム合金で「体に残らない医療機器」を実現

メルフロンティアは、体内で分解・吸収されるマグネシウム合金を用いた医療機器の開発に取り組んでいます。現在は、骨折治療などで使用される体内埋込型スクリューの実用化を進めています。

  1. 従来の医療現場の課題
  2. メルフロンティアが着目した医療現場の課題解決方法

従来の医療現場の課題

従来、医療現場ではステンレスやチタン合金製のスクリューが一般的に使用されてきました。これらの金属は強度や耐久性に優れる一方で、体内に永続的に残ることを前提とした素材であり、不具合が生じた場合には摘出手術が必要となるケースも少なくありません。

術後の合併症や炎症のリスク、さらには再手術に伴う身体的・経済的な負担が課題とされてきました。

メルフロンティアが着目した医療現場の課題解決方法

メルフロンティアが着目したのが、生体内で自然に分解・吸収されるマグネシウム合金です。この素材は一定期間を経ると体内で代謝され、最終的には骨や組織に置き換わっていく特性を持っています。すなわち、「体に残らない医療機器」という新しい概念を実現できる素材なのです。

また、既に生分解性樹脂(PLLA)などを使用したスクリューも存在しますが、マグネシウム合金はそれらに比べて格段に高い機械的強度を持ち、より安定した固定を可能にします。そのため、より幅広い骨折症例への応用が期待されており、医療現場からも高い関心が寄せられています。

患者にとっては「再手術が不要になる」という大きな利点があり、医療従事者にとっても手術リスクや治療期間の短縮につながる可能性があります。医療のQOL(生活の質)を根本から変えるこの技術は、次世代の医療機器として国内外で注目を集めています。

同社が抱える課題とは?|実現を阻む製品化のハードル

同社が抱える課題とは?|実現を阻む製品化のハードル

マグネシウム合金がもたらす新たな医療の可能性に大きな期待が寄せられる一方で、その実現には高い技術的な壁が立ちはだかっていました。
最大の課題は「加工できる企業がほとんど存在しない」という現実です。

  1. 課題① マグネシウムの性質による取り扱いづらさの問題
  2. 課題② マグネシウム合金の加工ができる企業がいない

課題① マグネシウムの性質による取り扱いづらさの問題

マグネシウムは、軽量で生体適合性に優れた金属である反面、非常に可燃性が高く、熱を帯びると発火するリスクを伴う難削材です。
特に、医療機器のように高精度が求められる微細加工では、工具選定・切削条件・温度管理のいずれもが厳しく制御されなければならず、わずかな誤差が加工不良や安全性の問題につながります。

そのため、従来から金属加工を得意とする企業であっても、マグネシウム合金の取り扱いには慎重で、「危険」「コストが見合わない」「前例がない」として、取り組みを敬遠するケースが多くありました。

課題② マグネシウム合金の加工ができる企業がいない

メルフロンティアが掲げる、「体に残らない医療機器」という構想を実現するためには、マグネシウム合金の微細加工を安全かつ精密に行えるパートナー企業を見つけることが最初の大きなハードルとなりました。

医療の未来を切り拓く技術でありながら、「加工ができない」という理由で実用化が進まない。そんな矛盾の中で、メルフロンティアは全国の製造企業にアプローチを続け、数々の断りを受けながらも、諦めることなく挑戦を続けていました。

協業の決め手は?|挑戦を受け入れてくれる会社

協業の決め手は?|挑戦を受け入れてくれる会社

マグネシウム合金を用いた医療機器の開発に賛同してくれる企業を探す中で、多くの企業からは「加工が難しい」「危険性が高い」「コストが合わない」と難色を示され、なかなか協力を得ることができませんでした。

そんな中で手を差し伸べてくださったのが、三和ニードル・ベアリングでした。

  1. 三和ニードル・ベアリングとの出会い
  2. 三和ニードル・ベアリングの動き

三和ニードル・ベアリングとの出会い

静岡とつくばをつなぐ技術交流イベントで代表の北川が登壇した際、三和ニードル・ベアリングからお声がけをいただき、そこから交流が始まりました。

初めての打ち合わせでは、資金面や加工リスクも含め、正直に課題をお伝えしました。
それでも三和ニードル・ベアリングは「難しいからこそ挑戦しよう」と、当社の挑戦に真正面から向き合い、全面的なバックアップを申し出てくださいました。

「うちはやったことがないけど、やってみよう。」その一言が、これまでの苦労を一瞬で報われた気持ちに変えました。
マグネシウム合金の加工は三和ニードル・ベアリングにとっても未知の領域でしたが、リスクを恐れず新しい技術に挑む姿勢に、私たちは強く共感しました。

三和ニードル・ベアリングの動き

実際の開発段階では、技術的なサポートだけでなく、進行の仕方や検討ポイントを丁寧にリードしてくださり、専門知識が不足していた私たちにとって大きな支えとなりました。
資料の整理や検討内容の可視化まで伴走してくださる姿勢が、再び挑戦への意欲を引き出してくれたのです。

三和ニードル・ベアリングの強みは、単に加工技術の高さだけではありません。
「経験がないこと」そのものを否定せず、可能性を一緒に探ってくれる、その柔軟さと探求心こそが、協業を決断した最大の理由です。だからこそ、図面がまだ存在しない段階からでも、一緒に考え、形にしていける。それが三和ニードル・ベアリングのものづくりの本質だと感じています。

今後の展望|“世界初”を社会実装するスタート地点に。

今後の展望|“世界初”を社会実装するスタート地点に。

両社の協業を経て、マグネシウム合金による医療機器開発は新たなステージへと進み始めています。今後はスクリューのバリエーション拡充を予定しており、設計段階から三和ニードル・ベアリングが参画することで、より高精度で量産化を見据えた製造工程の構築が期待されている。

また、マグネシウム素材には、まだ活かしきれていない特性が多く残されており、それらを引き出す新たな製品開発にも挑戦していきたいと同社は語っています。

三和ニードル・ベアリングは、こうした挑戦のパートナーとして、“世界初”の社会実装に向けた実現フェーズを共に歩んでいきたいと私たちは考えています。

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