研磨加工と研削加工は違いが分かりにくい?使い分けと設計時のコツ
- 加工技術
金属部品の仕上げ工程として用いられる研磨加工と研削加工は、いずれも砥粒を用いた加工であるため混同されやすい工程です。設計者からすると、研削加工で対応すべき範囲や敢えて研磨加工を指定するべきかなどの判断に迷うケースも少なくありません。
しかし、研磨加工と研削加工は、加工目的・管理対象・工程上の役割が明確に異なるため、違いを理解しないまま工程を指定すると、過剰品質やコスト増加、品質ばらつきにつながる可能性があるのです。
本記事では、研磨加工と研削加工の違いを整理し、設計者が判断に迷わないための使い分けと設計時の考え方を解説します。
研磨加工と研削加工とは?それぞれの基本的な役割

研磨加工と研削加工はいずれも材料の表面を仕上げる工程です。
しかし、研磨加工は表面状態を制御して機能を成立させる工程なのに対して、研削加工は寸法や形状、幾何学的な数値精度を加工する工程だという違いがあります。
ここでは精密加工工程における各工程の位置づけについて詳しく解説します。
- 研磨加工の基本的な役割
- 研削加工の基本的な役割
研磨加工の基本的な役割
研磨加工の基本的な役割は、前工程で確定した寸法・形状を前提に、表面状態を制御して部品の機能を安定させることです。設計上重要なのは、研磨加工が機能要求を満たすための仕上げ工程だということです。
原則として研磨は、部品の表面特性を整える工程であり、使用時の性能に影響します。
- 研磨加工が行われる部位と目的の例
- 摺動部における摩擦低減
- 摩耗粉の発生抑制
- 嵌合部のなじみ性向上
これらの性能は、寸法公差や形状精度だけでは判断できず、表面粗さや接触状態、仕上がりの均一性といった表面特性が、使用時の挙動を左右します。
そのため、研磨加工は図面寸法の保証ではなく、機能面を成立させる工程として位置づける必要があります。
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研削加工の基本的な役割
研削加工の基本的な役割は、設計図面で要求される寸法精度・形状精度を安定した数値で作り込むことです。切削加工では達成が難しい厳しい公差管理や、真円度・円筒度・平面度・同軸度といった幾何精度を再現性高く確保できる点が、研削加工の大きな特長です。
設計視点で見ると、研削加工は寸法精度・形状精度を工程内で確定させる役割を担う工程であることが重要です。研削段階で精度が不足していると、その後の研磨工程での補正は加工量が微小な分、再現性が低くなり、品質ばらつきの原因になります。
研削加工が行われる部位と目的の例
- 軸部・シャフト外径:外径寸法、公差、真円度の確保
- 軸受接触部:円筒度・同軸度の確保による回転精度の安定
- 平面部(当たり面・基準面):平面度、平行度の確保
- 嵌合部:はめあい公差の成立と組付け再現性の確保
これらの部位では、寸法そのものが機能に直結するため、加工結果を数値で管理できる研削加工が選ばれやすいです。そのため、寸法公差や幾何精度に関する要求は研削工程で対応できるように加工方法や公差設定を行う事が重要です。
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研磨加工と研削加工の3つの違い

図面上では同じ仕上げ工程として扱われる研磨加工と研削加工ですが、設計者が担保できる品質の範囲は大きく異なります。
ここでは、それぞれの違いを、役割と管理対象の観点から整理します。
- 加工目的と役割の違い
- 除去量・管理対象・評価指標の違い
- 工程上の位置づけの違い
1. 加工目的と役割の違い
研削加工の目的は、設計図面で要求される寸法精度・形状精度を確定させることです。真円度や円筒度、同軸度など、数値で管理すべき精度項目を、再現性高く作り込める点が最大の特長だと言えます。
一方、研磨加工の目的は、表面状態を整えて使用時の性能を安定させることです。摺動性や摩耗特性、外観品質など、図面寸法だけでは評価できない機能面に寄与します。
そこで、設計段階では、形状を成立させる工程と性能を仕上げる工程を明確に分けて考えることが重要です。研磨加工を寸法補正の手段として捉えると、工程設計に無理が生じやすく、品質がばらつく原因になりやすいです。
2. 除去量・管理対象・評価指標の違い
研削加工は研磨加工に比べて除去量が大きく、寸法公差や幾何公差を管理したい場合に適しています。評価指標はμm単位の数値を扱うことが多く、測定結果によって明確に合否が判断できます。
一方、研磨加工は除去量が極めて小さく、管理対象は表面粗さや摺動性、接触状態といった表面特性になります。加工結果は数値だけでなく、使用条件や相手材との関係によって評価される点が特徴です。
ここで注意すべきなのは、寸法精度と表面粗さは別軸の品質特性であり、互いに代替できないという点です。表面粗さが良好であっても寸法精度が保証されるわけではないことに注意が必要です。
3. 工程上の位置づけの違い
一般的に加工は、切削→研削→研磨の順で工程が構成されます。研磨加工が最終工程として配置されるのは、精度が確定した後でなければ、表面機能を安定して仕上げられないためです。
研磨工程で寸法を追い込もうとすると、加工量が微小な分、ばらつきが発生しやすくなります。その結果、再現性の低下や品質トラブルにつながるリスクが高まります。
設計上は、寸法精度・形状精度の確定は研削工程までで完結させることを前提に、工程順や公差配分を検討することが重要です。
研磨加工と研削加工の使い分けのポイント

研磨加工と研削加工の使い分けは、設計者がどの品質項目を工程で保証したいかによって決まるため、設計意図をよく検討して指示することが大切です。
ここでは、設計時に判断軸となる観点から、研磨加工と研削加工を使い分ける際の考え方を整理します。
- 精度要求から見た使い分け
- 用途・部品特性から見た使い分け
- 機能要求によって併用する場合もある
精度要求から見た使い分け
寸法公差や幾何精度に厳しい要求がある場合は、研削加工を中心に工程を構成する必要があります。研削加工は、寸法や形状を数値で管理できるため、設計図面で要求した精度を安定して再現できます。
一方、摺動性や摩擦低減、外観品質といった性能が重視される場合には、研磨加工が有効です。これらの性能は数値だけで管理しにくく、表面状態が使用時の挙動に大きく影響します。
設計者としては、「重要な寸法精度はどこか」「重要な性能はなにか」を明確にし、精度要求と機能要求を混同しないことが、適切な使い分けにつながります。
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用途・部品特性から見た使い分け
シャフトや軸受部品など、回転精度が求められる部品では、研削加工が品質の基盤となります。真円度や同軸度が確保されていなければ、後工程で性能を補うことは困難です。
一方、嵌合部や摺動部では、研削加工で寸法・形状精度を確保したうえで、研磨加工を行うことで、摩耗寿命や作動の安定性を向上させることができます。
部品特性に応じて、「精度優先」と「機能優先」のどちらが支配的かを判断することが、工程選定の重要なポイントになります。
機能要求によって併用する場合もある
実際の製品設計では、研削加工と研磨加工を併用するケースが一般的です。研削加工で寸法・形状精度を作り込み、研磨加工で表面機能を整えることで、無理のない工程設計が可能になります。
設計段階から併用を前提に考えておくことで、後工程での追加対応や無理な補正を避けやすくなり、品質トラブルの予防にもつながります。
設計時に迷いやすい研磨加工と研削加工の判断基準

ここまで、研磨加工と研削加工の一般的な使い分けについて整理してきましたが、実際の設計現場では、これらの考え方がそのまま当てはまらないケースも少なくありません。とくに図面指示や公差設定の場面では、加工方法と品質特性が混同され、判断に迷いやすくなります。
ここでは、設計時に判断が難しいポイントについて整理します。
- 表面粗さ指定と加工方法を混同しない
- 精度は研削で作り、研磨で補正しようとしない
- 過剰品質・工程増加を防ぐための設計判断
表面粗さ指定と加工方法を混同しない
図面に表面粗さを指定した場合、研磨加工が必須と誤解されることがあります。しかし、表面粗さの指定があるからといって、必ずしも研磨加工が必要になるとは限りません。
加工先の設備や加工条件によっては、切削加工のみで要求される表面粗さを満たせる場合もあり、工程削減やコスト低減につながるケースもあります。重要なのは、Ra値そのものではなく、その表面状態が使用時の機能にどう影響するかです。
摺動性や摩耗特性、再現性が求められる部位では、数値上の粗さが同じでも、研削・研磨による仕上げが必要になることがあります。
精度は研削で作り、研磨で補正しようとしない
寸法精度が不足している状態で研磨工程に進むと、加工条件や作業者の技術力の差によるばらつきが発生しやすくなります。
一般に、研磨は再現性の高い寸法補正工程ではありません。設計上は、寸法精度は研削工程で完結させることを原則とし、研磨はあくまで表面機能を整える工程として位置づける必要があります。
過剰品質・工程増加を防ぐための設計判断
必要以上に研磨工程を追加すると、コストやリードタイムが増加し、品質管理項目も増えます。設計段階では、「その研磨が本当に必要か」「機能上の効果があるか」を冷静に見極めることが重要です。
加工メーカーと早期に相談しながら工程を整理することで、過剰品質を避けつつ、安定した品質を確保する設計判断が可能になります。
研磨加工と研削加工でよくある質問(FAQ)

研磨加工と研削加工は、どちらも「表面を仕上げる加工」として語られることが多く、違いや使い分けが分かりにくい分野です。
ここでは、設計者や加工を外注する立場の方から特によく寄せられる質問を中心に、加工方法の種類や役割、技術的な位置づけについて整理して解説します。
Q1. 研磨加工にはどんな加工方法がありますか?
Q2. 研磨加工はなぜ重要視されているのですか?
Q3. 研削加工の例を教えてください。
Q1. 研磨加工にはどんな加工方法がありますか?
A1. 代表的な研磨加工には、砥石研磨、研磨布紙加工、ラッピング研磨、ポリッシング研磨(バフ研磨)、バレル研磨、電解研磨などがあります。
研磨加工と一口に言っても、その方法や目的は多岐にわたります。加工対象の材質や形状、求められる表面粗さ・外観品質によって、適した工法は大きく異なります。
例えば、高い平滑性や寸法安定性が求められる場合はラッピングやポリッシングが選ばれ、量産部品の表面均しにはバレル研磨が用いられるなど、用途や要求品質に応じて使い分けられます。
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Q2. 研磨加工はなぜ重要視されているのですか?
A2. 研磨加工は、摺動性や摩耗寿命、外観品質の安定に直結し、製品の性能や信頼性に大きく影響するためです。
研磨加工は、見た目を良くするための工程と捉えられがちですが、実際には製品性能や耐久性に直結する重要な役割を担っています。特に、精密機器や医療機器、半導体関連部品などでは、表面粗さや微細な傷の有無が機能不良につながるため、研磨工程の品質管理が重視されています。
Q3. 研削加工の例を教えてください。
A3. 代表的な研削加工には、円筒研削、内面研削、心なし研削、平面研削、工具研削、自由研削などがあります。
研削加工は、切削加工では実現しにくい高い寸法精度や形状精度を確保するために用いられる加工方法です。用途に応じて、さまざまな研削方式が存在します。加工対象の形状や精度要求、生産量に応じて方式が選択され、特にμm単位の精度管理が求められる部品では、研削加工が不可欠な工程となります。
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まとめ|研磨加工と研削加工は役割の違いを理解して使い分ける

研削加工は寸法や形状精度を作る工程、研磨加工は表面を仕上げる工程です。両者の違いを理解し、設計段階で適切に使い分けることで、品質とコストのバランスを最適化できます。
三和ニードル・ベアリングでは、研削加工をコア技術としつつ、研磨を含む社内一貫生産体制で精密部品加工に対応しています。工程選定や図面設計でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。