マグネシウム加工の基礎を徹底解説!安全に加工する方法とは

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マグネシウム合金加工とは、マグネシウム合金を切削・プレスなどによって目的の形状に成形する技術の総称です。

マグネシウム合金は実用金属のなかで最も軽く、アルミニウムの約3分の2、鉄の約4分の1という軽量性を持ちながら、優れた比強度(重量あたりの強度)を発揮することから、自動車部品・航空宇宙部品・電子機器筐体・医療機器など幅広い分野で採用が進んでいます。

一方で、マグネシウムは活性が高く、切削時に発生する切粉(きりこ)や粉塵が発火・爆発を引き起こすリスクがあるため、加工現場では他の金属以上に厳格な安全管理と専門的なノウハウが求められる材料でもあります。
「軽くて強い」というメリットを最大限に活かすためには、合金の特性を正しく理解し、適切な加工方法と安全対策を選択することが欠かせません。

そこで本記事では、マグネシウム合金加工をこれから検討する方や、材料選定で悩んでいる設計・調達担当者の方に向けて、以下の内容をわかりやすく解説します。

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そもそもマグネシウム合金とは?

そもそもマグネシウム合金とは?

マグネシウム合金とは、マグネシウム(Mg)を主成分として、アルミニウム(Al)・亜鉛(Zn)・マンガン(Mn)・ジルコニウム(Zr)・希土類元素(RE)などを添加した実用金属材料です。

マグネシウムは地球上に豊富に存在する元素で、密度はわずか1.74g/cm³。これはアルミニウム(2.70g/cm³)の約64%、鉄(7.87g/cm³)の約22%にあたり、構造用金属としては最も軽量という大きな特徴を持っています。

ただし、純粋なマグネシウム単体では実用部品としてそのまま使うことはできません。理由は次のとおりです。

① 強度が低い
引張強度が低く、機械的な負荷に耐えにくい

② 耐食性が乏しい
空気中の水分や塩分で酸化・腐食しやすい

③ 加工性に難がある
純マグネシウムは結晶構造(稠密六方格子/HCP)の影響で塑性変形しにくく、室温での成形が困難

④ クリープ強度が不足
高温下で変形しやすく、耐熱用途に向かない

こうした弱点を補うために、他の金属元素を加えて性能を引き上げたものが「マグネシウム合金」です。

たとえばアルミニウムを添加すると強度と耐食性が向上し、亜鉛は鋳造性を、マンガンは耐食性を、ジルコニウムは結晶を微細化して強度を高める効果があります。希土類元素を加えれば、耐熱性やクリープ特性も大きく改善されます。

このように添加元素を組み合わせることで、用途に合わせて「軽さ」「強さ」「耐食性」「鋳造性」「加工性」のバランスを最適化できるのが、マグネシウム合金の大きな魅力です。代表的な合金としてはAZ系(Al-Zn系)、AM系(Al-Mn系)、AE系(Al-RE系)、ZK系(Zn-Zr系)などがあり、それぞれ得意とする加工方法や適した用途が異なります。

次の章では、マグネシウム合金の種類と特徴について詳しく見ていきましょう。

主なマグネシウム合金の種類と特徴

主なマグネシウム合金の種類と特徴

マグネシウム合金は、アメリカで広く採用されている金属材料の国際規格であるASTM規格に基づいて分類されています。種類によって多少の差はありますが、アルミニウムの約3分の2、鉄の約4分の1という軽さが特徴です。

金属 密度 マグネシウム合金との比較
マグネシウム合金 約1.8g/cm³ 基準
アルミニウム 約2.7g/cm³ 約1.5倍重い
約7.9g/cm³ 約4.4倍重い

なお、合金記号は添加元素をアルファベット、含有量の目安を数字で表しています。例えばAZ91は、アルミニウム(Al)約9%、亜鉛(Zn)約1%を添加したマグネシウム合金です。添加元素の組み合わせによって特性が大きく異なるため、用途に応じた使い分けが重要です。

ここでは、代表的な3つの系統を以下に紹介します。

  1. AZ系マグネシウム合金
  2. AM系マグネシウム合金
  3. ZK系マグネシウム合金

参照:日本マグネシウム協会「マグネシウムの基礎知識」

AZ系マグネシウム合金

AZ系は、マグネシウムにアルミニウム(Al)と亜鉛(Zn)を添加した合金で、マグネシウム合金のなかで最もポピュラーに使われている系統です。アルミニウムが強度と耐食性を高め、亜鉛が鋳造性と機械的強度を向上させるため、強度・延性・成形性のバランスに優れているのが大きな特徴です。

切削加工や鋳造、ダイカストなど幅広い加工方法に対応できる汎用性の高さから、初めてマグネシウム合金を検討する際にも採用されやすい合金です。

代表的な種類:AZ91(鋳造用の代表格)、AZ31(展伸用の代表格)
代表的な用途:自動車部品(オイルパン・カバー類)、電子機器筐体(ノートパソコン・カメラ)、スポーツ用品(ゴルフクラブヘッドなど)

AM系マグネシウム合金

AM系は、マグネシウムにアルミニウム(Al)とマンガン(Mn)を添加した合金です。AZ系と比べてアルミニウムの含有量を抑えることで、延性(伸び)と靭性(粘り強さ)を高めているのが特徴です。衝撃を受けても割れにくく、エネルギー吸収性に優れているため、安全性が重視される部品に多く採用されています。

特に自動車の衝突安全部品やエアバッグ関連の部品など、「破断より変形でエネルギーを吸収したい」用途に適した合金です。

代表的な種類:AM60、AM50
代表的な用途:自動車のステアリングホイール芯金、シートフレーム、インストルメントパネル(インパネ)芯金、エアバッグハウジング

ZK系マグネシウム合金

ZK系は、マグネシウムに亜鉛(Zn)とジルコニウム(Zr)を添加した合金です。ジルコニウムには結晶粒を微細化する効果があり、結晶が細かくなることで金属組織が均一かつ緻密になり、強度が大幅に向上します。マグネシウム合金のなかでも高強度タイプに位置づけられる系統で、軽さと強さを両立したい用途で重宝されます。

ただし、ジルコニウムはアルミニウムと反応してしまう性質があるため、AZ系やAM系のようにアルミニウムを添加することはできません。鋳造よりも鍛造や押し出し加工に適した合金として知られています。

代表的な種類:ZK60、ZK61
代表的な用途:航空宇宙部品(機体構造材)、自転車フレーム(高級スポーツ車)、ミサイル部品、産業用ロボット部品

加工時にマグネシウム合金を採用する7つのメリット

加工時にマグネシウム合金を採用する7つのメリット

マグネシウム合金が自動車・電子機器・航空宇宙・スポーツ用品など幅広い産業分野で採用されているのは、他の金属材料には真似できない優れた特性を数多く備えているためです。

「軽い」というイメージが先行しがちですが、実際にはそれだけにとどまらず、剛性・制振性・電磁波シールド性・加工性・環境性能など、多方面で高いパフォーマンスを発揮します。

ここでは、マグネシウム合金を採用する代表的な7つのメリットを、具体的な数値や採用事例とあわせて詳しく解説します。

  1. 実用金属で最も軽く比強度が高い
  2. 耐くぼみ性が高い
  3. 振動吸収性(制振性)に優れる
  4. 電磁波シールド性が高い
  5. 寸法安定性が高い
  6. 切削性が良い
  7. リサイクル性が高い

1. 実用金属で最も軽く比強度が高い

マグネシウム合金の最大の特徴は、実用金属のなかで最も軽いことです。密度は約1.8g/cm³で、アルミニウムの約3分の2、鉄の約4分の1にすぎません。それでいて、比強度(重量あたりの強度)はアルミニウムや鉄を上回るレベルにあるため、「軽量化したいが強度は妥協できない」という設計要件に対して、最適解になり得る材料です。

特に、自動車や航空機のように重量1gの削減が燃費や性能に直結する分野では、マグネシウム合金の採用が進んでいます。製品の軽量化は、輸送コスト削減・省エネルギー化・CO₂排出量削減にもつながるため、環境配慮型ものづくりにおいても大きな価値を持ちます。

2. 耐くぼみ性が高い

マグネシウム合金は外部からの衝撃や荷重によって変形しにくい(へこみにくい)性質を持っています。これは、軽量でありながら比剛性(重量あたりの剛性)が高いためで、薄肉設計でも十分な強度・剛性を確保できることを意味します。

この特性が活かされているのが、ノートパソコン・タブレット・カメラ・携帯電話などの薄型・軽量電子機器の筐体です。樹脂筐体では実現できない「薄くて軽いのに頑丈」というニーズに応えられるため、モバイル機器の高級モデルでは標準的な材料として定着しています。

3. 振動吸収性(制振性)に優れる

マグネシウム合金は、鉄やアルミニウムよりも振動を吸収する能力(制振性)が高いことで知られています。金属内部での振動エネルギーが熱に変換されやすく、振動が短時間で減衰するため、騒音や共振を抑える効果が期待できます。

この特性から、以下のような「振動・騒音を抑制したい部品」での採用が広がっています。

  • 工作機械の主軸・カバー類
  • 自動車のステアリングコラム・トランスミッションケース
  • オーディオ機器のシャーシ
  • 産業用ロボットのアーム部品

ユーザーの快適性や精密機器の動作安定性に直結するため、付加価値の高い製品づくりに欠かせない特性です。

4. 電磁波シールド性が高い

マグネシウム合金は金属としての導電性を持つため、電磁波を遮蔽するシールド性能にも優れています。
具体的には、30〜200MHz帯域で90〜100dBという高いシールド効果を発揮するとされており、外部からのノイズ侵入と内部からの電磁波漏れの両方を防ぐことができます。

近年は5G通信の普及やIoT機器の増加にともない、電子機器の高密度実装が進む一方で、電磁ノイズ(EMI)対策の重要性が高まっています。樹脂筐体では電磁シールド効果が得られないため、別途シールド材を追加する必要がありますが、マグネシウム合金筐体であれば筐体自体がシールド機能を兼ねるため、部品点数や組立工数の削減にもつながります。

5. 寸法安定性が高い

マグネシウム合金は、100℃以下の温度範囲では寸法変化が非常に小さく、長期間使用しても変形やひずみが生じにくい特性があります。樹脂材料のように「経年で反りが出る」「温湿度で膨張収縮する」といった懸念が少ないため、高い寸法精度を長期にわたって維持できます。
この特性は、以下のような精密部品で特に重要視されます。

  • 光学機器のフレーム・鏡筒
  • 半導体製造装置の部品
  • 計測機器の筐体
  • 医療機器の精密部品

「組立時の精度」だけでなく「製品寿命までの精度維持」が求められる用途で、マグネシウム合金は信頼性の高い選択肢となります。

6. 切削性が良い

マグネシウム合金は、金属材料のなかで最も切削しやすいといわれています。切削抵抗を比較すると、その差は明らかです。

材料 切削抵抗(相対値)
マグネシウム合金 1.0(基準)
アルミニウム 約1.8
約6.3
軟鋼 約6.3

切削抵抗が小さいということは、高速切削が可能で、工具にかかる負荷も少ないということです。その結果、以下のようなメリットが得られます。

  • 加工時間の短縮による生産性向上
  • 工具の摩耗が少なく工具寿命が長い
  • 切削面の仕上がりが美しく、後工程の削減
  • トータルでの加工コスト低減

ただし、後述する発火リスクには十分な注意が必要です。「切削しやすい=安全」ではない点を理解したうえで、適切な切削条件を設定することが重要です。

7. リサイクル性が高い

マグネシウム合金は融点が約650℃と金属材料のなかでは比較的低く、再溶解に必要なエネルギーが少なくて済みます。アルミニウム(融点約660℃)と同等以下の温度で溶解できるため、リサイクル時のエネルギー消費とCO₂排出量を抑えられるのが大きな利点です。

また、リサイクル時に品質劣化が起こりにくく、何度も再利用できるクローズドループ・リサイクルが可能な材料としても評価されています。
SDGsやカーボンニュートラルへの取り組みが企業に求められるなか、環境負荷の低いサステナブル素材としての価値はますます高まっています。新規材料(バージン材)の使用量を削減できることは、コスト面でも環境面でも長期的なメリットとなります。

マグネシウム合金の欠点とは

マグネシウム合金の欠点とは

ここまでマグネシウム合金のメリットを多数紹介してきましたが、良い面ばかりではないことも事実です。優れた特性を持つ一方で、設計・加工・使用環境において考慮しなければならない弱点も存在します。
材料選定の段階でデメリットを見落としてしまうと、製品の品質トラブルや加工現場での重大事故につながる恐れがあります。マグネシウム合金を採用する前に、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが何より重要です。

ここでは、マグネシウム合金が抱える代表的な3つのデメリットと、それぞれに対する実務的な対策方法をあわせて解説します。

  1. 発火リスクがある
  2. 耐食性が低い
  3. 成型加工が難しい

1. 発火リスクがある

マグネシウム合金最大のデメリットが、加工時の発火・爆発リスクです。マグネシウムは活性が高い金属で、酸素との結合エネルギーが大きいため、ある条件下で激しく燃焼する性質を持っています。

特に切削加工で発生する細かい切粉(きりこ)や研削加工で生じる粉塵は、空気中の酸素と接触する表面積が広いため、摩擦熱や火花で容易に発火する危険があります。切粉が細かくなるほど(薄く・小さくなるほど)燃えやすくなり、粉塵状態では粉塵爆発を引き起こすリスクもあります。

さらにやっかいなことに、マグネシウム火災は水で消火できません。水と反応して水素を発生させ、かえって火災を拡大させてしまうため、専用の消火設備(D級消火器・乾燥砂など)が必要となります。

主な対策は以下になります。

  • 切削速度・送り量を適切に設定し、切粉を厚く・大きく生成する
  • 切削油は水溶性ではなく専用の不水溶性切削油を使用する
  • 集塵設備を導入し、粉塵を堆積させない
  • 加工エリアにD級消火器や乾燥砂などの消火資材を常備する
  • 切粉は密閉容器に保管し、酸化防止剤などで管理する

発火リスクは取り扱いを誤ると非常に危険ですが、正しい知識と設備があれば十分に管理可能です。マグネシウム合金加工の経験が豊富な専門加工業者に相談することが、安全確保の近道となります。

2. 耐食性が低い

マグネシウム合金は、鉄やアルミニウム、ステンレスなどに比べて腐食しやすい材料です。合金化によってある程度は改善されていますが、マグネシウム自体が非常にイオン化しやすい金属であるため、空気中の酸素や水分、塩分などと反応して表面が腐食する傾向があります。

特に注意が必要なのが、以下の2つのケースです。

(1)大気・湿気による腐食
湿度の高い環境や塩害が懸念される沿岸地域では、表面が酸化・腐食しやすくなります。屋外で使用する製品や、結露が発生しやすい環境では特に対策が必要です。

(2)異種金属接触腐食(電食・ガルバニック腐食)
マグネシウム合金が鉄・ステンレス・銅などの異種金属と直接接触すると、電位差によってマグネシウム側が急速に腐食します。ネジやボルトの締結部、他部品との接合部などで起こりやすい現象です。

主な対策は以下になります。

  • 化成処理(クロメート処理、リン酸塩処理など)による表面保護
  • 塗装・粉体塗装による防錆コーティング
  • 陽極酸化処理(アノダイジング)で耐食性の高い酸化被膜を形成
  • 異種金属との接触部には樹脂ワッシャー・絶縁シートを介在させる
  • ステンレス製ボルトを使う場合は絶縁スリーブを併用する

実際の製品設計では、これらの表面処理を組み合わせて使用するのが一般的です。用途や使用環境に応じた最適な防錆処理を選ぶことが、製品寿命を延ばすカギとなります。

3. 成型加工が難しい

マグネシウム合金は、常温では塑性変形(プレスや鍛造など)が困難な材料です。これは結晶構造に起因する性質で、マグネシウムは六方最密充填構造(HCP:Hexagonal Close-Packed)を持ちます。
HCP構造の金属は、変形時に結晶がすべる方向(すべり面)が限られているため、常温では特定の方向にしか変形できません。無理に成形しようとすると、割れやクラック、表面欠陥が発生してしまいます。アルミニウム(面心立方格子/FCC)や鉄(体心立方格子/BCC)のように、あらゆる方向に変形できる金属と比べると、加工の自由度はかなり低くなります。

主な対策は以下になります。

  • 温間加工(200~300℃程度)または熱間加工(300℃以上)で実施する
  • 温度を上げることで結晶のすべり方向が増え、塑性変形が容易になる
  • 厚板や複雑形状の成形は、ダイカスト(鋳造)やチクソモールディングなどの溶融成形に切り替える
  • 切削加工で対応できる形状であれば、最初から切削主体の工法を選択する

このように、マグネシウム合金は「加工方法を選ぶ材料」でもあります。設計段階で「どの加工方法を採用するか」をあらかじめ想定しておくことで、製造コストやリードタイムの最適化につながります。

マグネシウム合金の主な加工方法

マグネシウム合金の主な加工方法

マグネシウム合金は、切削・鋳造・プレス・研磨など複数の加工方法に対応できる汎用性の高い材料です。
ただし、それぞれの加工方法には得意な形状・ロット数・精度・コストがあり、製品の要求仕様に合わせて最適な工法を選ぶことが重要になります。

ここでは、マグネシウム合金で採用される代表的な5つの加工方法について、それぞれの特徴と適した用途をわかりやすく紹介します。「どの加工方法を選ぶべきか」を判断する際の基礎知識としてご活用ください。

  1. 切削加工
  2. ダイカスト加工
  3. プレス加工

切削加工

旋盤・マシニングセンタ・NC旋盤などの工作機械を使い、回転する刃物(または素材)で材料を削り取って目的の形状に仕上げる加工方法です。マグネシウム合金は切削抵抗が他の金属の半分以下と非常に小さく、高速切削が可能なため、加工時間の短縮と高い寸法精度を両立できます。

特に試作品の製作・小ロット生産・複雑形状の部品など、「精度重視」「自由度重視」の用途に最適な工法です。一方で、切粉の発火リスクがあるため、切削条件の最適化と安全管理が欠かせません。

マグネシウム合金の切削加工について、より詳しい内容を以下の記事で解説しています。

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ダイカスト加工

溶融したマグネシウム合金を金型に高圧で圧入し、一気に成形する鋳造方法です。複雑な形状を一体で成形できるため、大量生産に最も適した工法として、自動車部品や電子機器筐体などで広く採用されています。

マグネシウム合金はアルミニウムよりも流動性が高いため、薄肉部や微細形状を持つ金型でも隅々まで材料が行き渡り、薄肉・軽量・高剛性の製品を効率よく製造できます。サイクルタイムが短く、量産時のコストメリットも大きい工法です。

プレス加工

金型を用いて板材に力を加え、曲げ・絞り・打ち抜きなどで形状を作る加工方法です。マグネシウム合金は前述の通り常温での塑性変形が困難なため、一般的には約250℃に加熱した温間プレス加工で行われます。

加熱設備が必要になる分、工程は複雑になりますが、薄板から軽量かつ高剛性の部品を効率よく量産できるのが大きな魅力です。ノートパソコンの筐体や電子機器のカバー類など、薄型製品の製造で採用されています。

マグネシウム合金を加工する際の注意点

マグネシウム合金を加工する際の注意点

マグネシウム合金は、軽量・高比強度・高い切削性といった多くのメリットを持つ一方で、加工現場では他の金属とは比較にならないほど厳格な安全管理が求められる材料です。

特に「発火・爆発リスク」は、作業者の生命や工場全体の安全を左右する重大な問題であり、対策を怠ると深刻な事故につながります。実際、過去にはマグネシウム合金加工工場での粉塵爆発事故が国内外で報告されており、「マグネシウム合金加工は安全管理がすべて」といっても過言ではありません。

ここでは、加工現場で必ず押さえておくべき3つの重要な注意点を、具体的な対策方法とともに解説します。

  1. 切りくずの発生を最小化する
  2. 切り粉の廃棄処理を徹底する
  3. 消火対策を用意して加工する

切りくずの発生を最小化する

切り粉が細かくなりすぎないように、切削速度や送り量、切り込み深さを適切に管理することが基本です。マグネシウム合金の切り粉は、粉末状や霧状になるほど発火リスクが高まります。そのため摩擦熱の発生や切り粉の管理が重要です。

例えば切削加工では、鋭利な工具を使用して切り粉を連続的に排出させ、切削油は非水溶性の鉱物油系を使用して切り粉管理を徹底することが重要です。また、バレル研磨では、水と反応して発火するリスクを避けるため、乾式バレル研磨や専用研磨液を使用します。

切り粉の廃棄処理を徹底する

回収した切り粉は乾燥した状態で密封容器に保管し、適切な廃棄が必要です。放置すると湿気との反応で水素ガスが発生し、自然発火のリスクが高まります。水溶性切削液で濡れた切り粉は特に危険なため、炭酸カルシウムなどの専用処理剤で不活性化してから廃棄します。

また、加工中は切り粉を機械周辺に堆積させず、定期的に回収・除去することも重要です。切り粉の蓄積は発火リスクを高めるだけでなく、作業環境や品質にも悪影響を及ぼす可能性があります。また、加工中は切り粉を機械周辺に堆積させず、定期的に回収・除去することも重要です。切り粉の蓄積は発火リスクを高めるだけでなく、作業環境や品質にも悪影響を及ぼす可能性があります。

消火対策を用意して加工する

マグネシウムの切り粉が発火した場合、水をかけると水素ガスが発生して燃焼が拡大するため、水や一般的な消火器は使用できません。マグネシウム火災には金属用消火器や乾燥砂などを使用します。加工現場には必ず常備のうえ、作業者全員が使用方法を把握することが重要です。

マグネシウムの加工についてよくある質問

マグネシウムの加工についてよくある質問

ここでは、マグネシウム合金の加工に関して特に多く寄せられる質問について、ポイントを押さえてお答えします。

Q1. マグネシウムの加工で水溶性切削油は使用できますか?
Q2. マグネシウム合金の加工で火災リスクが高まる原因は何ですか?
Q3. マグネシウム合金はアルミニウム合金と何が違いますか?

Q1. マグネシウムの加工で水溶性切削油は使用できますか?

A. 原則として推奨されません。 マグネシウムは水と反応して水素ガスを発生させる性質があり、引火・爆発の重大なリスクがあるためです。

マグネシウム合金の切削加工では、非水溶性の鉱物油系切削油(不水溶性切削油)を使用するのが一般的です。鉱物油系の切削油は水分を含まないため、マグネシウムとの危険な反応が起こらず、切粉の冷却・潤滑・排出をバランスよく行えます。

ただし例外として、マグネシウム合金専用または推奨と明記された水溶性切削油であれば使用可能なケースもあります。水溶性切削油は安定剤や反応抑制剤が配合されており、安全性が確保されています。

使用前には必ずメーカーの安全データシート(SDS)を確認し、マグネシウム対応であることを確かめてから採用してください。

Q2. マグネシウム合金の加工で火災リスクが高まる原因は何ですか?

A. 主な原因は「微細な切粉の発生」「切粉の蓄積」「水分との接触」の3つです。それぞれが発火・爆発の引き金になるため、現場では以下の対策が欠かせません。

  • 微細な切粉の発生 → 切削速度・送り量・切込み深さを最適化し、切粉を厚く大きく排出する
  • 切粉の蓄積 → 集塵装置で即時回収し、加工エリアに堆積させない
  • 水分との接触 → 水溶性切削液・湿気・雨水を避け、乾燥した密閉容器で保管する

さらに、鋭利な工具の使用による摩擦熱の抑制、こまめな清掃による粉塵の除去、D級消火器の常備といった多層的な対策を組み合わせることが、安全な加工現場づくりの基本です。

Q3. マグネシウム合金はアルミニウム合金と何が違いますか?

A. マグネシウム合金は「軽さ」と「切削性」で優れ、アルミニウム合金は「耐食性」と「成形性」で優れます。

両者は軽金属として比較されることが多い材料ですが、それぞれに得意分野があります。

比較項目 マグネシウム合金 アルミニウム合金
密度 約1.8g/cm³(より軽い) 約2.7g/cm³
比強度 高い 高い
切削性 非常に良い(切削抵抗1.0) 良い(切削抵抗1.8)
耐食性 やや低い(表面処理が必要) 高い
塑性加工性 常温では困難(温間加工が必要) 常温で容易
発火リスク あり(切粉に注意) 低い
コスト やや高い 比較的安価

まとめ|マグネシウム加工は素材特性の理解と安全管理が鍵

まとめ|マグネシウム加工は素材特性の理解と安全管理が鍵

マグネシウム合金は軽量で比強度が高く、制振性などにも優れた特性を持つ一方、発火リスクや耐食性の低さ、塑性加工の難しさといった課題もあります。そのため、高品質で安全な加工を行うには、素材特性の理解に加え、切り粉管理や消火対策の徹底が欠かせません。

三和ニードル・ベアリングでは、世界初の体内で分解・吸収されるマグネシウム合金の加工など難削材の加工に多数の実績があります。加工難易度の高い部品作成などでお困りの際はお気軽にご相談ください。

【加工事例】
世界初の『体に残らない医療機器』を実現へ「生体吸収性マグネシウム合金」の製品開発に挑む協業事例

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